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「商業目的の定期建物賃貸借」
執筆=京都大学教授 横山美夏
   
1999年の借地借家法改正により、定期建物賃貸借制度が導入された。その契機は、わが国で十分な広さのある良質な居住用借家の供給が少ないのは、賃貸人が建物賃貸借の解約・更新拒絶するには「正当事由」がなければならない(借地借家法28条)ことが原因である、との主張が、90年代後半に、非常に強くなされたことにある。したがって、定期建物賃貸借制度は、もともと、居住目的の借家の供給を増やすことを想定して設けられた。

 定期建物賃貸借は、「正当事由」がなくても、期間満了により当然に終了する賃貸借契約である。借地借家法によれば、正当事由なしに解約・更新拒絶できるという合意を賃貸借契約で定めても、無効である(同法30条)が、今回の改正により、30条の例外として、一定の要件を備えれば、当事者の合意によって、契約期間満了後更新がないと定めることができるようになった(同法38条)。

 改正から5年近く経つが、では、実際に、居住用賃貸借で定期建物賃貸借が用いられるようになったかというと、そうとはいえないようである。むしろ、オフィスビルなどの商業目的での利用が多いといわれる。

 確かに、賃貸人にとって、期間が満了すれば確実に終了する賃貸借契約にはメリットがある。物件を引き続き同じテナントに賃借したいときは、あらためて、新しい賃貸借契約を締結すればよい。しかし、賃貸人にとって、つねに、定期建物賃貸借のほうが良いとは必ずしもいえない。というのも、借りる側からすれば、定期建物賃貸借は、原則として、契約期間の途中で解約できない点で硬直的である一方、契約期間が満了した後、再契約できるかどうか分からないという点で、不確実であるというリスクがある。したがって、店舗など、建物の改装等、相当の初期投資が必要な利用態様を目的とするテナントにとっては、立地条件が非常に良い場合はともかく、それほどでもない場合には、定期建物賃貸借は、賃料や敷金が安いとしても、あまり魅力的ではない。同じ場所で長期的に安定した営業を計画しているテナントにとっても同様である。また、再契約できるかどうか不確実な賃借人が、建物のメンテナンスや改良、あるいは、建物周辺も含めた経済活動の全体的な活性化に積極的に取り組むことはあまり期待できない。したがって、長期的な見通しを持った優良なテナントを確保する、あるいは、地域とのつながりも重視するようなテナントを確保するには、定期建物賃貸借よりも、通常の建物賃貸借が賃貸人にとってよいことも少なくないと考えられる。

 これに対して、事務所など、内部にあまり手を加えないで利用することができ、場所を移転することによる不利益も相対的に少ない使用態様のテナントにとっては、定期建物賃貸借は、賃料・敷金などが安くなる点で魅力的であり、賃貸人の側から見ても、建物の維持・管理などに関する問題は相対的に生じにくい。このような業種に関しては、定期建物賃貸借は、賃貸人・賃借人双方にとって、それなりにメリットのある方法だといえよう。

 最後に、定期建物賃貸借契約の締結には、一定の手続きと形式が必要であるので、この点について触れておきたい。

 定期建物賃貸借は、賃借人の居住あるいは営業活動の安定を脅かすおそれがあるので、賃借人が、これから結ぶ賃貸借契約には更新のないことを知った上で、納得して契約することが必要である。そのため、定期建物賃貸借契約として有効であるためには、まず、契約が公正証書などの書面によって結ばれなければならない(同法38条1項)。また、賃貸人は、契約を締結する前に、賃借人に対し、これから結ぶ賃貸借契約には更新がなく、期間の満了により契約は終了することを書面に記載して賃借人に渡し、その旨説明しなければならない(同条2項)。この規定の通りに説明しないで結ばれた賃貸借契約は、定期建物賃貸借としての効力はない(同条3項)。ということは、普通の建物賃貸借を結んだことになり、賃貸人は、正当事由がなければ契約の解約・更新を拒絶できなくなってしまう。この点には、とくに注意が必要である。
 
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